背景を透かして、宙に浮かせる。
空間に溶け込むクリアなwelcome!サインを。
| 渡辺 浩平
背景が透けて、宙に浮くよう。背景の景色までデザインに取り込む、空間に溶け込むクリアなwelcome!サインを作る。
カフェやギャラリー、ブティック——デザイン性の高い店先に、抜け感のある"透け"のサインを。今回作るのは、面板に2mm厚の透明アクリル(特注仕様)を使った、背の高いアーチ型ポールスタンド「サインスタンド2716」です。使うのは、インクの乗っていない箇所までクリアに透ける「高透明塩ビシート」と、透明感を損なわない専用の「高透明ラミネート」。透明アクリルの裏面にデザインを"裏刷り"で貼り込むことで、背景の景色までデザインの一部になり、文字やフラワーがまるで宙に浮いているように見えます。白い不透明の板にはない、涼やかで上品な透けサインの作り方を、ファクトリーからお届けします。
今回使用するポールスタンドのご紹介
STEP1
背景が透けるクリアな仕上がりのために、高透明の塩ビシートにデザインをフルカラーで印刷します。
透明アクリルの看板づくりは、"透け感"をどこまできれいに出せるかが勝負どころ。その第一歩が、印刷する素材選びです。今回使うのは、透明度の高い「高透明塩ビシート」。一般的な白地のシートと違い、インクが乗っていない箇所がかなりクリアに透けて見えるので、文字や花柄だけが宙に浮かんだような、抜け感のある仕上がりになります。
大型インクジェットプリンター(エプソン)で、「welcome! OPEN」の文字と、ふちを彩る水彩フラワーをフルカラーで刷っていきます。よく見ると、デザインが左右反転して刷られているのが分かります。これは、透明アクリルの裏面にシートを貼り、表側から透かして見せるための"裏刷り"。表から見たときに文字が正しく読め、なおかつインク面が保護される、透明サインならではの刷り方です。
アクリルの裏面にデザインシートを貼り、アクリル越しに見せることには、見た目の面でも大きなメリットがあります。透明な板を一枚挟むことでデザインにほんのりと奥行きが生まれ、表面の照り返し(反射)も抑えられて、とても上品に、きれいに仕上がるのです。ただ貼るのではなく"アクリル越しに魅せる"——このひと工夫が、透明サインならではの質感を生み出します。
STEP2
透明感を損なわずにインク面を守るため、専用の高透明ラミネートで表面を保護します。
印刷が終わったら、インク面を保護するラミネート加工です。ここでも透明サインならではのこだわりがあります。使うのは、一般的なフィルムではなく、専用の「高透明ラミネート」。透明シートにせっかくきれいに刷っても、濁ったフィルムを重ねてしまってはクリアな透け感が台無しになってしまいます。そこで、透明度を極力損なわない専用のラミネートを選ぶことで、インクが乗っていない箇所まで、驚くほどクリアな透明感をキープします。
加工には、大型ラミネーター(GBC X-TREME 54W)を使用。ローラーの圧力でムラや気泡が入らないよう均一に圧着し、印刷したデザインをしっかり守りながら、透明シートの美しさをそのまま封じ込めていきます。この"高透明シート+高透明ラミネート"の組み合わせこそ、上品な透けサインを支える土台です。
STEP3
ラミネートが終わったシートを貼りやすいサイズに、マルチカッティングマシン「ZUND(ズンド)」で正確に切り分けます。
ラミネートが終わったら、大きなシートを面板に貼りやすいサイズへと切り分ける「バラシ」の作業です。サインモールのファクトリーでは、この工程にもスイス製のマルチカッティングマシン「ZUND(ズンド)」を活用しています。
今回はワーク用に用意したデザインですが、普段はデザインを1枚ずつ貼りやすいサイズに切り分けるバラシの量がとても多く、これを一枚ずつ手で切っていると、どうしても時間がかかってしまいます。そこでZUNDを使い、印刷したトンボ(目印)を基準に、狙ったサイズへ一気に、しかもきれいなカタチで裁断。作業時間を大きく短縮しながら、仕上がりの精度も高く保つことができます。「機械に任せられるところは機械に、人の手をかけるべきところは丁寧に」——このメリハリも、たくさんの看板をきれいに作り続けるための工夫のひとつです。
STEP4
アクリルはアルコールが使えないため、水で表示面を何度も洗浄。ホコリを徹底的に落としてから、位置を合わせて貼り込みに備えます。
いよいよ、透明アクリルの面板にデザインシートを貼り込む準備です。まずは道具の確認から。φ260mmの透明アクリル板、裏刷りしたデザインシート、そして表示面をきれいにするための水スプレーと水切りワイパーをそろえます。
ここで、透明アクリルならではの大切な注意点があります。それは「アルコールで拭かない」こと。一般的な素材の脱脂にはアルコールを使うことも多いのですが、アクリルはアルコールで拭くとクラック(細かなひび割れ)が入ったり、表面が白く曇ったりして、せっかくの透明度が落ちてしまう恐れがあるのです。そこでサインモールでは、表示面を水(霧吹き)で何度も吹いては、ワイパーで水切りする——という洗浄を繰り返し、アクリルを傷めずに表面のホコリや汚れを徹底的に落としていきます。透明だからこそ、たった一粒のホコリも仕上がりに響く。地味ですが、透けサインの美しさを左右する最重要の下地づくりです。
板がぴかぴかに整ったら、印刷シートにも定規とペンで貼り込み位置の基準を書き込み、シート側も丁寧に拭き上げます。あとは印を頼りに位置をぴたりと合わせ、重しを乗せて仮止め。動かないよう固定して、貼り込み本番へと備えます。(貼り込みは水を使わない"空貼り(からばり)"で行います。)
STEP5
糊付きシートの裏紙を少しずつ剥がしながら、フェルトのスキージーで空気を押し出し、透明アクリルにぴたりと貼り込みます。
下準備が整ったら、いよいよ貼り込み本番です。今回は水を使わない"空貼り(からばり)"。重しでしっかり押さえたまま、糊のついたシートの裏紙(剥離紙)を、シートが動かないよう慎重に少しずつ剥がしていきます。
裏紙を剥がした部分から、フェルトのついた専用のスキージーで、中心から外側へ向かって一定の力で滑らせ、空気を押し出しながら透明アクリルに密着させていきます。残りの裏紙を送り出すように剥がしては圧着し、を繰り返して、フチまで気泡をひとつも残さず貼り切っていきます。
透明サインは、背景が透けて見えるぶん、ほんの小さな気泡やホコリの一粒も、そのまま影のように浮かんで見えてしまいます。だからこそ、光にかざして裏からも表からも確認しながら、隅々まで神経を使って、吸い付くような一枚に仕上げていきます。
じつは、この透明シートの空貼りは、通常の塩ビシートに比べて格段に難しい作業です。透明塩ビシートをアクリル板に貼る場合、先ほどのように水を使う"水貼り"で行うのも一般的。というのも、アクリル板は糊の食いつきがとても良く、空貼りだと一度触れた瞬間にピタッとくっついてしまい、位置の微調整がほとんどきかないからです。それでもサインモールがあえて空貼りにこだわるのは、水を使わないぶん、乾いたあとに水残りや水垢が一切残らず、透明面をいちばん美しく仕上げられるから。空貼りで貼り切れるなら、その方が断然きれいなのです。この難しい空貼りは、社内でも練習を重ね、"納品クオリティ"のスキルを身につけた職人だけが担当しています。
STEP6
手のひらで全体をなじませてから、光にかざして、気泡やホコリが入っていないかを隅々まで確認します。
貼り込みが終わったら、最後は自分たちの目と手による確認です。まずは手のひらで面全体をやさしくなでるように押さえ、シートを透明アクリルにしっかりとなじませます。指先の感覚で、浮きや小さな気泡が残っていないかを確かめていきます。
そして透明サインならではの確認が、光にかざしてのチェック。窓や壁を背にして板を透かすと、正面から見ただけでは気づきにくいわずかな気泡やホコリ、水残りも、くっきりと浮かび上がってきます。背景がそのまま透けるからこそ、ごまかしがきかない——だからこそ、角度を変えながら表からも裏からも、納得のいくまでじっくりと見極めます。透き通った一枚に仕上がっていることを確認できたら、面板の完成です。
STEP7
はみ出した透明シートを円周に沿って切り落とし、取り付け穴を開けて、透き通った円形の面板を仕上げます。
貼り込みと検品が終わったら、透明アクリルからはみ出した余分なシートを切り落としていきます。デザインナイフの刃先を、丸い面板の側面(コバ)にぴたりとあてがい、板そのものをガイドにしながら、カーブに沿ってなめらかに裁断。切り離した透明なシートをそっと剥がすと、アクリルのフチまでぴったり収まった、すっきりとした円形が現れます。透明どうしなので境目が分かりにくく、いつも以上に神経を使う繊細な作業です。
周辺を整えたら、スタンドのフレームへ取り付けるための穴を開けます。デザインの見え方を崩さない位置に、正確に。ここまでで、透き通った円形の面板が完成します。
そして、光にかざしてみると——背景の景色や壁がそのまま透け、水彩フラワーで縁取られた「welcome! OPEN」だけが宙に浮かんだように見える、透明サインならではの美しさ。アルミ複合板や黒い面板とはまったく違う、涼やかで上品な佇まいに仕上がりました。
STEP8
透き通った面板を、背の高いアーチ型のポールスタンドへ2点の金具で吊り込み、最終清掃をして仕上げます。
いよいよ最後の工程、組み立てです。透明の面板を、背の高いアーチ型ポールスタンド(サインスタンド2716)へ取り付けていきます。開けておいた2つの穴に金具を通し、アーチフレームの内側へ、上から掛けるように吊り込みます。
この2716は、ゆるやかな弧を描くスチールのアーチが特徴。細身のフレームの中に透明の面板が浮かぶことで、背景の景色までデザインの一部のように取り込み、店先を涼やかに、上品に彩ります。円盤状のベースがしっかりと効いているので、背が高くても安定感は抜群です。
最後は、指紋やホコリを残さないよう、表裏の面をていねいに拭き上げて仕上げます。透明サインは、少しの手あかも光の加減で目立ってしまうもの。お客様のもとへ届いた瞬間にいちばん美しい状態であるように、最後の一拭きまで心を込めて。これで、透き通ったアクリルサインのスタンドが完成です。
背景ごとデザインに。透き通ったアクリルサインの完成です。
高透明の塩ビシートに裏刷りをして、専用の高透明ラミネートで守り、アルコールを使わず水で丁寧に洗ったアクリル板へ、練習を重ねた職人が空貼りで貼り込む——。ひとつひとつの工程を積み重ねて、透き通った welcome! サインが完成しました。
こうして仕上げると、面板の向こう側の景色までがデザインの一部になります。今回のように緑あふれる背景の前に置けば、文字やフラワーがまるで宙に浮いているよう。壁の色、床の質感、差し込む光——置く場所によって表情を変え、店舗空間にすっと溶け込みます。白い不透明の板にはない、"抜け感"と一体感こそが透明アクリルサインの醍醐味です。
今回主役になった背の高いアーチ型ポールスタンドは、通販でもお求めいただけます(サインスタンド2716(透明アクリル面板))。透明ならではの見え方や素材の相性など、気になることはお気軽にご相談ください。あなたのお店の雰囲気に、いちばん似合う一台をお作りします。
同じデザインを、シックに引き締める。定番のブラック複合板バージョン。
今回は"透明アクリル"の特注仕様でご紹介しましたが、同じ「welcome! OPEN」のデザインを、標準仕様のブラックのアルミ複合板で作ることもできます。こちらが、その仕上がりです。透明版が背景に溶け込む涼やかさなら、ブラック版は不透明の黒がデザインをきりっと引き締め、白い文字と水彩フラワーがくっきり際立つ、シックで大人っぽい佇まい。背の高いアーチ型ポールスタンドの標準の面板がこのブラック複合板なので、迷ったらまずはこの定番仕様がおすすめです。
この仕上がりでよければ、面板を含めた一式を通販でそのままお求めいただけます(サインスタンド2716(ブラック複合板・標準仕様))。「透明版の抜け感がいい」「いや、黒でしっかり見せたい」——素材ひとつで印象は大きく変わります。どちらが似合うか迷ったときも、お気軽にご相談ください。
透明アクリルにするか、ブラック複合板にするか。同じ「welcome! OPEN」でも、面板の素材ひとつで、こんなにも表情が変わります。背景に溶け込ませて宙に浮かせるのか、黒でぐっと引き締めて主役にするのか——どちらが正解ということはなく、お店の空間や見せたい雰囲気に合わせて選べるのが、一枚ずつ手づくりする看板の面白さです。
サインモールでは、こうした素材の違いや仕上がりのイメージも、写真やサンプルを交えながら一緒に考えていきます。「うちの店ならどっちが似合う?」——そんな入口のご相談からで大丈夫です。あなたのお店のいちばんの"顔"になる一台を、工程のひとつひとつまで心を込めてお作りします。
さぁ、背景ごとデザインになるクリアなサインを作りましょう。
「透明アクリルで、抜け感のあるサインを作りたい」「うちのデザインを透明シートに載せたい」——そんなご相談から、デザインのご提案、無料のデータチェックや試し刷りまで、看板づくりのすべてをワンストップでサポートいたします。特注仕様も一枚から承ります。まずはお気軽にご相談ください。スタッフ一同、こころよりお待ち申し上げます。














































