Work04

和風行灯看板に、
モダンな欧風デザインで、
電飾看板に新しい選択肢を。

| 渡辺 浩平

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ファクトリーのスタジオ内に設置され欧風グラフィックが電球色で明るく浮かび上がる行灯看板の佇まい
Goal

行灯看板という伝統的な和風電飾看板に対し、モダンな欧風グラフィックを掛け合わせることで、和風以外のオシャレな店舗スペースにも美しく調和する新しい電飾看板としてのポテンシャルを引き出す。

和風居酒屋や割烹、旅館の軒先で古くから親しまれてきた日本の伝統的な店舗サイン「行灯(あんどん)」。サインモールのファクトリーでは、この完成された和の様式美に対してモダンな洋風デザインを融合させるという、一種のアンチテーゼとも言える新しいデザインアプローチに挑戦しました。目指したのは、純和風の空間だけでなく、コンクリート打ち放しのモダンカフェ、インダストリアルなバー、あるいは現代的なオフィスエントランスの受付カウンターにまで自然に馴染む、スタイリッシュなスタンド型の電飾看板の創出です。グラフィックを丁寧に貼り込んでいく職人の手技と、電球色の温かみのある光源を100%活かしきるための物理的・構造的な段取りの裏側を詳しく解説します。

今回使用するLEDランプ式京行灯のご紹介

STEP1

電球色の明かりを活かすため、高透明塩ビシートに積層印刷を施します。

一般的な電飾看板では、光を綺麗に透かす乳白色のシートにデザインを印刷することが多いのですが、それで行灯看板を作ってしまうと、アクリル面板本来の美しい白さや、中に入る電球色のあたたかい光が持つ独特の風合いが遮られてしまいます。そこで、下地が綺麗に透けて見える「高透明シート」を使用するのですが、そのまま黒いインクを載せるだけでは、夜間にライトを点灯したときに強い光がインクを突き抜けてしまい、せっかくのロゴや文字が薄くボヤけて見えなくなってしまいます。

この強い光に負けてしまう現象(灯り負け)を防ぐために、インクジェットプリンターで2つの層を重ねて印刷する「積層(せきそう)印刷」を行います。まずはインクの通り道に光を遮るための『白インクの層』をしっかりと敷き詰め、その上から追いかけるように黒いデザインを重ねていきます。この見えない白い壁を内側に仕込んでおくことで、夜間に強いライトが点灯しても文字のシルエットがくっきりと浮かび上がり、昼でも夜でも変わらない高い読みやすさを保つことができるようになります。行灯の美しい光を100%活かしきるための、印刷工程における大切なこだわりです。なお、こうした高透明シートへの積層印刷は、看板印刷・大判出力からシート単体でもご注文いただけます。

STEP2

屋外での長期使用に耐えるよう、UVカットラミネートフィルムを圧着します。

印刷が終わった高透明塩ビシートの表面に、UVカット機能が付いたラミネートフィルムを貼り合わせる加工を行います。屋外に設置される看板は、毎日の直射日光(紫外線)や雨風にさらされるため、そのままではインクの色褪せやシート自体の劣化が進んでしまいます。そこで、大型のラミネート機械を使い、均一な圧力をかけながらフィルムを隙間なく密着させることで、印刷面を紫外線や雨水から物理的にガードし、長期間にわたって綺麗な状態を保てる高い耐久性を持たせます。

また、今回はあえて光沢を抑えた「マット調(つや消し)」のフィルムを選んでいます。表面のツヤをなくすことで、日中の太陽光や夜間の街灯・店舗照明が板面に白く反射してギラつくのを防ぐ効果があります。これにより、どんな時間帯でも文字やデザインがすっきりと見やすくなるだけでなく、伝統的な行灯看板が持つ佇まいに自然と馴染む、上品で落ち着きのある質感に仕上がります。

STEP3

変形面板へズレなく貼るため、シートの粗裁断と貼り込み位置の目印付けを行います。

行灯看板の表示面には、上に向かって幅が窄(すぼ)まっていく独特な台形のアクリル面板が使われています。この変形した面板に対して、印刷した文字やデザインがほんの数ミリでも傾いてしまうと、周囲に残る透明な余白のバランスが崩れ、夜間に内部の照明が点灯したときに全体の歪みがはっきりと浮かび上がってしまいます。そのため、職人の勘だけに頼って貼り付けることはできません。

この難しい形の面板へズレなく確実に貼り付けるために、シートを1面分の大きさに切り分けたあと、位置合わせの基準ラインを作る作業を行います。作業台の上にシートを広げ、印刷の目印(トンボ)を基準にしながら、定規を当てて、ペンを使ってシートに『貼り付け位置の基準』となる目印を正確に書き込んでいきます。この一手間を加えておくことで、アクリル面板に載せたときに迷わずベストな位置を特定できるようになります。仕上がりの美しさを左右する、ファクトリーならではの細やかな段取りの一つです。

STEP4

看板本体を開梱してアクリル面板を取り出します。

行灯看板は、重厚な金属製の外枠フレームの中に、光を透過するアクリル面板がぴったりと収まった構造になっています。しかし、この組み立てられた状態のままでは、外枠フレームの段差が邪魔をしてヘラ(スキージー)をフチまで十分に滑らせることができません。端のほうにシワや気泡が残る原因になってしまうため、台形の傾斜が付いた面板の端や四隅のギリギリまで、シートを隙間なく綺麗に貼り付けることが難しくなります。

そこで、シートを面板の隅々まで寸分の狂いもなく密着させるために、まずは届いたパッケージからLEDランプ式京行灯の本体を一度取り出し、外枠フレームを丁寧に分解してアクリル面板を単体の状態へと抜き出す作業を行います。しっかりと固定された箱から看板をゆっくりと引き出し、マットブラックの金属フレームを傷つけないよう慎重に持ち上げて、内側の乳半アクリル面板を取り出します。またこの分解のタイミングに合わせて、お客様の手元に届いてすぐに点灯できるよう、ソケットへ付属のLED電球をあらかじめセットする細かな調整も同時に行っています。面板を遮るもののない単体の状態にして作業台へ寝かせることが、これからの美しい貼り込み施工を支える大切な準備となります。

STEP5

点灯したときのホコリの影を防ぐため、アクリル面板を念入りに水掃除します。

内側からライトを当てる電飾看板は、強い光が板を透過するため、表示面のわずかな汚れにもデリケートです。もしアクリル面板とシートの間に小さなホコリや服の糸くずが挟まったまま貼り付けてしまうと、夜間にライトを点灯したときに、その異物が黒い影(シルエット)となってくっきりと浮かび上がってしまいます。昼間は綺麗に見えても、夜に看板を光らせた瞬間に影が目立ってしまうのを防ぐため、施工前の面板を完全に綺麗な状態にする必要があります。

そこで、作業台の上にアクリル面板を寝かせ、薄い中性洗剤を混ぜた水を霧吹きでたっぷりと吹き付けます。そこから柔軟なゴム製のワイパーを滑らせることで、板の表面についている目に見えないほど小さなチリや細かなホコリを、水分と一緒に外側へと完全に押し出して切り落としていきます。面板に一点の曇りもなくなるまでこの清掃を何度も繰り返すことで、夜間にライトをつけたとき、影のないクリアで美しい光を放つ看板に仕上がります。

一見すると地味に思えるこの下準備の出来栄えが、夜間にライトを点灯したときの最終的な美しさを大きく左右します。サインモールのファクトリーでは、お届けした看板が実際の店頭でパッと明るく灯り、お客様のお店を綺麗に引き立てる瞬間をいつもイメージしています。だからこそ、シートを貼り付けた後からはもう手を入れることができないアクリル板のクリーニングには特に時間をかけ、一点の曇りも残さないよう丁寧に作業を行っています。

STEP6

傾いた面板へまっすぐ配置するため、「水貼り」でテープの目印に合わせて位置を決めます。

透明シートとアクリル板は非常に粘着の相性が高いため、そのまま貼り付ける「空(から)貼り」だと、一度くっついた部分を剥がすのが難しく、シワや気泡を入れずに綺麗に貼るのが困難です。そのため、店舗のガラス面にシートを貼るウィンドウサインなどでもよく採用されている「水貼り」という手法を選んでいます。これは、一発勝負で貼り付けるリスクを避け、シートをアクリル面板の上に載せたあとでもミリ単位で滑らせて、台形に窄(すぼ)まった難しい形状の面板に対してベストな位置へと優しく誘導できる方法です。

具体的には、アクリル面板とシートの糊面の両方にたっぷりと水を吹き付けておき、位置をぴったり合わせたあとにヘラで水分をフチへと押し出していく貼り方です。水が押し出されるのと同時に中の空気も一緒に抜けていくため、シワや気泡を残さず非常に綺麗に密着させることができます。

STEP7

2種類のスキージーを使い分けて、隅々までキレイにシートを貼り込みます。

ターゲットマークを合わせて位置が完全に決まったら、いよいよシートをアクリル面板へしっかりと貼り付けるメインの作業に移ります。この段階では、アクリル面板とシートの間にまだたっぷりと施工液(水)が挟まっている状態です。ここからヘラを使って水分をフチへと完全に絞り出していくのですが、もし中にわずかでも水を残したままにしてしまうと、看板が完成して夜間に内部のライトを点灯したときに、残った水や乾いたあとの水垢(みずあか)が白いモヤのような不自然な模様となって内側から透けて見えてしまいます。これでは、せっかくの上品で落ち着いたデザインの美しさが損なわれてしまうため、中の水分を1滴も残さず押し出していくこの工程が、貼り込みにおける一番の正念場となります。

そこでファクトリーでは、特徴の異なる「2種類のヘラ(スキージー)」を巧みに使い分けて貼り込みを行います。まずは、広い面積の水分を効率よく均一に押し出すために、シートを傷つけないフェルトが貼られた「大きな青いスキージー」を使用し、中央から外側に向かってリズミカルに水を切り落としていきます。

全体の大まかな水が抜けたら、今度はゴム製の水貼り専用の「オレンジ色の小さなスキージー」へと持ち替えます。この小さなヘラを使い、台形の面板のフチや四隅のコーナー部分といった、どうしても水や空気が溜まりやすい細かな隙間をピンポイントで徹底的に狙い、水分を一滴残らず外へと追い込んで絞り出します。道具の特性を活かしながら隅々まで確実に密着させることが、夜間でもムラのないクリアな光を放つ看板に仕上げるための最も大切な職人技です。

STEP8

フチからのめくれや剥がれを防ぐため、はみ出た余分なシートをきれいに切り落とします。

シート全体の貼り込みと水分を抜く作業が無事に終わったら、仕上げとして、アクリル面板からはみ出している余分なシートをカットする作業を行います。このとき定規は使わず、カッターの刃先を厚みのあるアクリル面板の側面にピタッとあてがいます。アクリル板そのもののフチをガイド代わりにしながら、手元を安定させてスーッと一定の速度で滑らせるように切り落としていきます。

もしこのカット作業にほんのわずかでも切り残しや外側へのはみ出しがあると、このあと金属フレームの中へ組み立てる際に、フレームの細い隙間にシートが引っかかってペロッとめくれてしまう原因になります。さらに、そのめくれた隙間から雨水や結露が入り込むと、長年使っていくうちにシートがフチから剥がれてしまうといった深刻なトラブルにも繋がります。看板の角にある丸みを帯びたカーブ部分も、カッターの刃先の角度を細かくコントロールしながら滑らかになぞり切る、職人の高い集中力が求められる最後の仕上げです。

STEP9

光にかざして細部まで検品し、本体フレームに組み込み、点灯テストを行います。

シートのはみ出しをきれいに切り落としたら、いよいよ最終仕上げの工程です。まずは、完成したアクリル面板をファクトリーの部屋の照明にかざし、シートの内側に小さなホコリや空気が残っていないかを透かして厳しくチェックします。内側からライトを当てる行灯看板は、ほんの少しの異物でも点灯時に黒い影となって浮かび上がってしまうため、職人の目で四方から光を当てて隅々まで確認します。異物がないことを確認したら、水貼りの作業中に付いた手の跡や水分を、柔らかい専用の布(ウエス)を使って綺麗に拭き上げていきます。

表示面が完全にクリーンになったら、マットブラックの落ち着いた金属フレームの中に、面板を傷つけないようゆっくりと慎重に組み込んでいきます。

すべての組み立てが完了したら、最後に実際にコンセントを接続して明かりを灯す「点灯検査」を行います。昼間に見たときの美しさはもちろんのこと、夜間にお店の前に置かれてパッと明かりが灯ったときに、あたたかみのある電球色の光がデザインをどれだけ綺麗に引き立てているかを自分たちの目で確かめます。ムラのない上品な明かりが周囲を優しく包み込んだこの瞬間こそが、ファクトリーのスタッフが一番ホッとして、ものづくりの喜びを実感する瞬間です。

Finish

和洋の魅力が心地よく溶け合う、モダンな佇まいの行灯看板が完成しました。

伝統的な和の佇まいと、現代的なグラフィックデザインが心地よく溶け合う新しい行灯看板が、こうして無事に完成しました。

これまでは「和風のお店が置くもの」というイメージが強かった行灯看板ですが、今回のようにモダンで現代的なデザインをクロスオーバーさせることで、行灯が持つ新しい可能性を少しだけ広げられたのではないかと感じています。実は行灯看板って、内側から優しく綺麗に光るうえに、限られたスペースにもすっきりと置けて、なにより独特の温かみがあっておしゃれなんです。だからこそ、和風の店舗だけに限定されてしまうのは、なんだかちょっともったいないよね、と私たちは思っています。和食店や旅館だけでなく、モダンなカフェや洋風のセレクトショップなど、お店のジャンルを問わず、ぜひたくさんのお店でこの魅力を楽しんでいただけたら嬉しいです。

サインモールのファクトリーでは、ウェブサイトからいつでも気軽にご注文いただける定番サイズの電飾看板はもちろん、今回のようなお客様のこだわりを形にする特注仕様の行灯看板まで、さまざまなお店に合わせた看板作りのご相談を承っています。ひと口に行灯看板と言っても、レジ横やカウンター脇、エントランスにちょこんと置ける小さな卓上サイズから、路面店の店先をどっしりと飾る大きな自立型サイズまで、大きさや形、フレームの素材は本当にさまざまです。

看板のサイズや形が変われば、それに合わせてシートの切り方や位置合わせのやり方、水貼りの力加減といった現場でのアプローチも一台ずつ変わります。それでも、私たちがものづくりに込める「ちゃんとしたものをお届けしたい」という真面目な想いや、お客様の大切なお店を明るく引き立てたいという姿勢が変わることは決してありません。

顔の見えないネット通販だからこそ、私たちはただ看板を作って発送するだけでなく、お届けした看板が実際にお店の前に立ち、新しく訪れるお客様を最初にお出迎えするその大切な瞬間をいつもイメージしています。お客様の手元に無事に届き、お店の顔として優しく灯るその時までが、私たちの「看板製作」の現場です。その誇りと喜びを胸に、私たちは今日もファクトリーで一台一台、丁寧に手を動かし続けています。

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まずはお気軽にご相談ください。スタッフ一同、こころよりお待ち申し上げます。